ドーピングの話題あれこれ (スポーツひろしま第97号)
(財)広島県体育協会スポーツ医・科学委員会委員長 佐々木英夫 |
これまで再三書きましたように、近年競技スポーツにおいてドーピング検査は避けて通れないものになっています。そのため広島県体育協会では2008年から「ドーピングコントロール便利帳」をつくり、選手やコーチの皆さんにお届けしています。この「便利帳」のコンセプトはドーピングコントロールのことを漏れなく、またわかりやすくお伝えすることです。そのため、A3版の用紙の表にはドーピングについて知っておくべきことを項目に分けて書き、裏面にはドーピング違反に問われる心配のない薬を記しています。これさえ読めばドーピングとはどんなもので、どのようなことに気をつければよいかが一目瞭然で、いつどこでドーピング検査を受けても心配はないといえるでしょう(と思っています・・・)。さらに画期的なのは「ミウラ折り」という東大の偉い先生が発明した折り方で小さくたたんでおり、ポケットに収まるサイズにしてあることです。疑問があればいつでも開いて見てみることが出来ます。この「便利帳」は今や全国区となってきました(?)が、皆さんもつねに身近に持つようにしてください。
最新版の「便利帳」は2009年1月1日時点でのWADA(世界アンチ・ドーピング機構)の世界ドーピング防止規程に基づくものです。ドーピングの状況は刻々と変化していますので、それに対応するためにWADAは禁止表(禁止薬物に関する国際基準)を毎年更新しています。今回は2010年1月1日から発効する変更について書くことにしましょう。
2010年1月1日からの主な変更点
今回の変更の主な点は(1)禁止物質の変更、(2)TUE(治療目的使用に係る除外措置)の変更です。
(1)の禁止物質に関しては2009年までは監視プログラムに入っていたプソイドエフェドリンが再び禁止物質になったことが重要です。監視プログラムとはドーピング検査で検査はされますがその物質が検体(尿)から検出されてもドーピング違反にはならない薬物です。プソイドエフェドリンは比較的多くの風邪薬に含まれている薬ですが、アスリートに濫用されている可能性が疑われたため再び禁止物質となったと考えられます。皆さんも風邪薬を使用するときは十分注意してください。
また、静脈内注入は、「禁止方法」の中に記載されており、引き続き禁止されています。しかし、これについての記述は毎年変わっており、2010年禁止表では「医療機関の受診過程または臨床的検査において正当に受けるものを除いて禁止」と書かれています。ですから熱中症や脱水などの緊急の状況で医療機関において、また移送中に静脈内注入を行うことはTUE申請なしで可能と考えられます。しかし、その際には静脈内注入を受けた競技者の状態や医療行為が診療録にきちんと記録されていることが必要です。
(2)TUEに関しては、まず提出期限が早まりました。すなわち、今まではドーピング検査の行われる競技会の21日前までに提出する必要がありましたが2010年からは30日前までに提出しなくてはなりません。
もうひとつの大きい変更は気管支喘息で使われる吸入ベータ2作用薬についてです。ご存知のように2009年からはTUEの略式申請がなくなり、すべて標準申請になりました。しかし、吸入ベータ2作用薬の中でも比較的使用頻度が高いサルブタモールとサルメテロールに関しては2010年からは申請する必要がなくなり、ドーピング検査のとき「使用の申告」をするだけでよくなりました。
これは気管支喘息の選手にとっては朗報ですが、気をつけなくてはいけないのは、それ以外の吸入ベータ2作用薬は全てTUEの標準申請が必要なことです。またTUEが承認されるためにはいくつかの医学的書類が必要ですが、これについては機会がありましたらまた書きましょう。サルブタモールについては尿中に1000ng/ml以上検出されたときはドーピング違反が疑われるとされますので、気をつけましょう。
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